婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「誰か」


パタンとドアが開閉する音に続いて、バタバタと足音が聞こえてくる。

ルーが起こして回っているにしては、ずいぶんと賑やかな音だ。賑やかすぎて、目が覚めてしまった。
というより、今は何時?

うっすらと目を開けると、外はまだ薄暗い。起床にはまだ早いようだ。


「誰か……」


廊下から聞こえる男性の声に、ハッとする。
昨日連れてきた人かしら?

急いで上着を羽織ると、そっとドアを開けて、廊下の様子を窺った。


「誰か……ああ、よかった」

振り返った彼はそう言いつつ、私と視線が合うと一瞬驚いたように目を見開いた。


「あなたは、昨日の……?」

グノーが連れ帰った人は、こんな容姿だったかしら?薄暗い廊下では、はっきとわからないけれど……

じっと目を凝らして、昨夜の彼を思い出してみる。

髪の色は……確か、黒にちかいダークブラウンだったはず。けれど、今目の前にいる人は、赤茶色をしている。

目の色は閉じていたからわからないけれど、この人ははちみつのような金色をしている。




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