婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「ドリー?」

『そんな王女もおったなあ。まあ、強すぎる魔力もいろいろと不都合があるんじゃないか?』

「そうかも知れんな。なあ、宿屋のドリー」

ニヤリとするアルフレッドに、ドリーもニヤリと返した。この二人の中では、なにやら通じ合っているようだ。


それにしても、なんてことだ。どこの国にも属さない緩衝地帯の森の奥の古い宿屋に、各国の王太子と王子、さらには王女までいたとは……


『さて、ミランダ。今頃、お前が捕らえた獣人達は、全員サンミリガンにもどされておるだろう。今回使われた香草は、二度と育たぬよう、根絶やしにした。獣人の王子ルーカスよ、そこは安心せい』

「あ、ああ」


そういえば、獣人と魔女って……
魔女の一方的な恋慕というか、執着というか……

『心配せんでいい。わしは宿屋の女将にすぎん。魔女の気配だって感じなかっただろ?』

「あ、ああ。全く」

『やっと立ち上がったぐらいのひよっこ獣人なんぞ、興味のかけらもないわ』

くっくっくと笑うドリーに、ルーカスは気まずそうな顔をした。


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