婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
『さあ、ミランダ。せめて、自分のしでかしたことを素直に話してこい』

すっかりしょげかえっているミランダは、どこから現れたのか、紫のマントを羽織ったマージュミアルの使い手によって、連行されていった。


『ライラ、客が待っておる。そろそろ帰っておいで』


〝帰っておいで〟
その響きが、私の心を震わす。

いつのまにかあの森の奥の宿が、私の帰る場所になっている。


「はい!!」


『ああ、そうそう。獣人の坊や』

「ぼ、坊や!?」

そう呼ばれたルーカスは、嫌そうに顔を歪めた。


『なんだ、親切心で教えてやろうと思ったのに』

「す、すまない。なんだったか?」

『そろそろ……』

もったいぶった言い方をするドリー。

『雨が降るみたいだぞ』

「なんだって!?」


そんなに驚くことだろうか?
ルーカスは剣をおさめると、馬車に向かって走り出そうとした。

でも、アルフレッドがその手首をガシッと掴んで引き止めてしまった。




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