婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「ライラ!!」

来た……


毛玉ちゃん達を存分に撫でていると、もうすっかり聞き慣れた声が私を呼んだ。晴天の今日は、もちろん『ゲコゲコ』ではなく、人の声だ。


「ルーカス……」

客だというのに、〝いらっしゃいませ〟の一言がすぐに出ないのは、いろいろと察して欲しい。


「ああ、愛しい俺の番。会いたかった」

いくら庶民相手とはいえ、断りもなく異性に抱きつくのはルール違反だ。



「ルーカス様!!」

ルーカスから遅れること数十秒。息を切らしてやってきたのは、彼に忠実な家臣、ジャレット。苦労人だ。

「勝手に行かないでください!!」


全くもって、本当にその通り。
家臣を振り切るとは、王子にあるまじき行動だ。




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