婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「ル、ルーカス、様?」

緊張気味に呟いたのは、ハロルドだった。
そういえば、チェリーはここで働いていた頃、ルーカスに何度も対面していたけれど、ハロルドは初めてになる。

突然目の前に現れた自国の王子に、驚くのも無理はない。

でも、これだよ?って言いたくなるのは、グッと我慢した。


チラリとハロルドとチェリーに目を向けたルーカス。つづいて、足元の子どもたちを見ると、満面の笑みを浮かべて満足げに頷いた。


「もうこんなに大きくなったのか。どうだ、子育ては。なにか困っていることはあるか?」


真面目な口調のルーカスは、まさしく王子の姿だ。ぜひとも、常時その調子でいて欲しい。


「は、はい。ルーカス王子が庶民にも目をかけてくださって、妻も私も不自由なく子育てができています」

「そうか、そうか。またなにか気付いたことがあれば、遠慮なくなんでも言ってくれ」

「ありがとうございます」


この立派な王子が、一度雨を浴びるとカエルになるなんて、ハロルドには信じられないだろう。



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