婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「なにが俺の番だ!!」


ここに割り込んできたのは……
はあ……
これまた思わずため息をこぼしてしまう人。グリージア王国の王太子、アルフレッド殿下。 

「ライラは俺の最愛の人だ」

「なにぃ!!」

この2人は、もう何ヶ月にも渡ってこんなやりとりを繰り広げているる。
ジャレットや騎士達、両護衛もすっかり慣れて……
いや、諦めて……見捨てて……
止めることは早々に放棄したようだ。抜刀しない限りは、見なかったことにするらしい。

私もそれが正解だと思う。相手にするだけ時間の無駄というもの。付き合わされる護衛さん達が、気の毒で仕方がない。


「ライラ、ん」

呆れる私を呼び止めたのは、厨房担当のグノー。彼は相変わらず言葉足らずだ。

「なあに、グノー」

「ん」

いつものように突き出された拳の下に手を広げれば、なにかがポトリと落とされた。どうやら今日は、ラムネをくれたみたい。

「いつもありがとう、グノー」


「あっ、こら!!勝手に俺の番に求愛給餌をするなと、毎回言ってるだろ!!」

目ざとくグノーに気が付いたルーカスが、こちらに詰め寄ってくる。そこはさすがに、ジャレットが羽交い締めにして止めてくれた。



< 245 / 260 >

この作品をシェア

pagetop