婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「ところで、この辺で一晩明かせるような所ってないかしら?」

「はあん。あんた、訳ありか?」


訳ありといえば訳ありなのかな……
強いて言えば、不可抗力で訳ありにされたってところかしら。

沈黙を肯定だと捉えた彼は、ニヤリとした。


「まあ、詳しくは聞かないぜ。ところで、お嬢さん名前は?俺はハロルドだ」

これほどまで話し込んでいたのに、そういえばお互いに名乗ってもいなかった。


「私は……」

セシリアの名を言うべきか……
王太子と3年ちかくもの間婚約していたのだもの。私の名前は、それなりに知れ渡っているはず。
できれば、身元はバレたくない。ここでまで色眼鏡で見られたら、家を出てきた意味がないもの。


「ラ、ライラ。ライラよ」

とっさに思い付いた名前を言うも、ハロルドは特に不信には思わなかったようだ。




< 40 / 260 >

この作品をシェア

pagetop