婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「アルフレッド殿下が私を?」


セシリアは、15歳になったばかりの自分の元にもたらされた知らせに、密かに身震いしていた。

王太子であるアルフレッドから、自分を婚約者にと望んでいる話を父から聞かされ、正直愕然としていた。


ついに、この時がきてしまったのかと。



「一応、セシリアの気持ちを第一にとは言われている、が……」


〝はあ〟とため息を吐く父を、セシリアはじっと見つめていた。


「しかし、王家からの要請を断ることは……」


父と同じく、セシリアもまた、解消しきれなかった複雑な思いを、小さなため息として吐き出していた。


「ですが……身分的に相応しくないのでは?王族に……それも王太子であるアルフレッド殿下の婚約者となれば、やはり侯爵家の方ぐらいでないと……」


そう言いながら頭に浮かべたのは、ヴァネッサ・カナンガムをはじめとした、常日頃煌びやかに着飾った侯爵家のご令嬢達だった。
ちょうど年齢的にも合うご令嬢が、他にも数人頭の中に浮かんでいた。




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