甘えたがりな君



 さらに5分が経った。





 彼は全く動く気配がない。
 私のことをぎゅっと抱きしめたまま。


 そんな中。
 見計らっていた、タイミングを。
 いつ起き上がろうか、と。



 嫌なわけではない、彼とこうしていること。


 ただ、そろそろご飯の準備でもしようかな。
 そう思っているだけ。

 なので。
 思った、彼に話してみようと。


「私、そろそろ起き上がろうかな。
 ご飯の準備もしたいし」


 言ってみた。
 彼の腕の中に包まれながら。


 だけど。
 彼は返事をしてくれないし。
 私のことを抱きしめたまま動かない。



 もしかして。
 眠ってしまっている?

 それとも。
 聞こえなかった?
 声が小さくて。


 どうしよう。
 できない、このままでは。
 しばらく起き上がることが。

 そう思ったとき。


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