甘えたがりな君



「そんな必要はない」


 彼が口を開いた。


 なんだ、起きてたんだね。





 って。

 今なんて?


 そんな必要はない。
 そう言ったような。



 わからない。
 彼の言っている意味が。


「ご飯の準備、必要ない」


 私の様子に気付いたのか。
 彼が言葉を続けた。


「えっ⁉」


 驚いた、彼の言葉に。

 なぜ必要ないのだろう。
 ご飯の準備。


「ご飯の準備、必要ないって、
 お腹空いてないの?」


「空いてるよ」


 わからない、ますます。
 彼の言っていることが。


「じゃあ、なんで……」


 言ったのだろう、彼は。
 ご飯の準備の必要はない、と。


「だから」


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