白いジャージ ~先生と私~
旅館に帰り、お母さんが言った。
「さっき、おばさんにうちで預かると話したのよ。どう思う?」
私も
お姉ちゃんも
お父さんも
同じ気持ちだった。
あんな弱ったおばあちゃんに
まだ
優しくない あの家の人々。
せめて、毎朝ドアを開けておはようを言って欲しい。
3時のおやつを食べながら・・一緒にテレビを見て欲しい。
そんな小さな願いも叶えてくれないなら、
もう頼らない。
私達家族と先生は、心を一つにしたんだ。
その夜、先生と晩酌したお父さんは、本当に楽しそうだった。
「かずとくん・・・君は、酒が強いな!!わしは・・こういう日を楽しみにしとったんじゃ・・奈美は、彼氏を家になんて連れて来ないからな。」
「わかったよ、今度連れてくるよ!でも、びびんないでよ!かずととは全然違うから・・」
お姉ちゃんの彼氏は、一度だけ家の前で会ったことがある。
確かに・・・びっくりするかもしれないな。
茶髪のロン毛で、うるさい車に乗っていたことしか覚えてないけど。
その夜、おばあちゃんが家に来たら、どこに寝かせるかとか
どこに遊びに行くかとか・・
みんなで遅くまで話した。
おばあちゃんの笑顔を思い出しながら・・・
その笑顔が・・・
私達の見た最後のおばあちゃんの笑顔になるなんて
思ってもみなかった。