白いジャージ ~先生と私~


先生からのメールを思い出す。



『お前の笑顔、ちゃんとおばあちゃんに見せてあげろよ!』



私は、精一杯の笑顔で

おばあちゃんにお別れを言った。






お通夜とお葬式で見たおばさんの涙が全て嘘だとは思えなかった。




人の目や、世間からどう思われるかを気にした涙は、

きっと

誰の心にも響かない。



でも、少しだけ私の心に響くものがあった。


離れてる私にはわからない何かがあったのかも知れないと思った。


その涙が本物の涙であることを願った。


ずっとずっと一緒に暮らしてきて、全く悲しくないはずがない。

おばあちゃんを疎ましく思っていたこともあると思うが、

少しは大事に思ってくれてたのか・・・


もしそうなら、それをおばあちゃんに伝えたかった。



お母さんは泣かなかった。

最後まで涙をこらえてた。


おばさんの涙を目にした時のお母さんの気持ちを考えると

どうしようもなく・・

苦しかった。




お母さんは、おばあちゃんの棺に菊の花を入れるときまで

泣かなかった。


おばあちゃんの強さを

お母さんが引き継いだ。



お葬式の後、おばさんの目を真っ直ぐに見ることができなかった。

涙を流し、おばあちゃんの話をするおばさんは、

今・・どんな気持ちなんだろう・・



何を思い出しているんだろう。


おばあちゃんと、何か楽しい思い出があったのかな。


もしあったなら、私達家族はすごく救われる。




おばあちゃんの部屋で、遺品の整理をした。


お母さんがおばさんに言った一言。


「私達でやりますので、結構です。」




恨み言も、何も言わなかったお母さん。

今までお世話になりましたと深々と頭を下げていたお母さん。



遺品だけは、触られたくなかったんだ。
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