白いジャージ ~先生と私~
「ここのテニスボールも汚いの捨てといて!」

想像していたより、本格的な掃除・・・でも楽しくて仕方がない。

先生が毎日いる部屋。

体育の先生だけが集まるこの部屋は、普段は生徒はなかなか入り辛い。

きょろきょろと辺りを見回すと、先生のものがいっぱい。

先生の部活のジャージ、先生のスーツ、先生の部活の表彰状。

うちの陸上部、すごく強いんだ。

先生の力の入れようもすごいけどね。


「あぁ!お前制服汚れるぞ!これに着替えろ!」

先生から手渡されたのは、よく先生が着てる先生のTシャツに半パン。

「えぇ~~~?こんなの着るの?」

なんて言いつつも、本当は感激してたんだ。

「じゃ、俺職員室行ってるから、ゆっくり着がえとけ!鍵閉めとけよ。」

「先生、覗かないでね!!」

「ば~か!!」


先生の服・・・

例え、この服達を洗濯したのが、先生の彼女だとしても・・

嬉しいよ。

いつも先生が着てる服に包まれて、幸せな気持ちになる。

鏡の前に立ってみる。


「げ~~??」

ダボダボですんごいダサい・・

先生が着るとあんなにかっこいいのにな。

ま、いっか。


改めて、体育教官室を見回してみた。

先生の机・・・初めて触る机。


いいよね?

私、先生の椅子に座らせてもらっちゃった。


先生の・・消しゴム。

先生のタオル。

先生のボールペン。


先生の使ってるパソコン・・・


大好き。

大好き。


抑えきれないこの大好きを、大声で叫びたい。


好きなのに伝えられないってこんなにももどかしいんだね。


先生のパソコンのマウスに触れてみる。

毎日使ってるんだぁ、これ毎日触ってるんだ。



マウスになりたい・・・



マウスの裏側のふたを開けて、ボールみたいな丸い物体を取り出した。

いいよね?


その丸い物体に、油性ペンで・・・


『スキ』・・・・って書いて・・・



これくらい許してね、先生。

このキモチ、先生に伝えないから、これだけは許してね。


ここなら、きっと誰にも気付かれないね。
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