白いジャージ ~先生と私~
先生の存在
お母さんと私は、先生を2階へ案内した。
階段の窓辺に飾られている写真が目の端に映る。
懐かしい幼い頃の家族写真。
階段の灯りに照らされて、写真の中のお姉ちゃんの笑顔が眩しい。
お姉ちゃんの部屋のドアをノックするのは・・何年ぶりだろう。
昔は、晩御飯ができると私がよく呼びに行ってたっけ。
その度に、悲しい気持ちになっていたことを思い出す。
トントン・・
「奈美、ちょっと出てらっしゃい。」
いつもより明るいお母さんの声が響く。
・・・
珍しく1回呼んだだけで、お姉ちゃんはドアを開けた。
「何?」
お姉ちゃんは、お母さんの横に立つ先生に気付くと、乱れた服装を少し直した。
「初めまして。直さんの高校の教師の、新垣と言います。夜分にすみません。」
先生は、丁寧にお辞儀をした。
「直、あんたなんか悪いことでもしたの?」
お姉ちゃんは、横目でちらりとこっちを見て、また先生を見る。
「はははは・・違いますよ。直さん最近元気なかったんで、心配して勝手に来ただけなんです。」
先生は穏やかな笑顔でお姉ちゃんを見ている。
私は、立ちくらみのような不思議な体の変化に耐え切れず、壁にもたれかかる。
こんなに、お姉ちゃんの顔を真正面から見るのは・・・
いつぶりだろう・・それくらいに、久しぶりだった。