白いジャージ ~先生と私~
家に帰ると、またまた嬉しいことが待っていた。
食卓に座るお姉ちゃんが、お母さんと笑いながら話をしていた。
涙が出そうになる。
「ねぇ、直あいつとどうなってんの?あの先生と!!」
お姉ちゃんは、雑誌に目を落としたまま私に話しかける。
私達はいつもそうだ。
目を合わす事がなんとなく
怖くて・・
私も、いつも目を見ていないような気がする。
「どうもなってないよ!!」
「嘘つき!!最近やたらと嬉しそうだし・・・やっちゃった?」
お母さんは、動揺して何かを落とした。
私も、唐突な質問に真っ赤になる。
「そういうことか・・あの先生なかなかやるねぇ!」
「ち・・違うって!!そんなことしてないよ。私が一方的に好きなだけだもん。」
「あらら・・すんなり認めちゃったわねぇ。お姉ちゃんの作戦勝ちね。」
お母さんは、冷えたわらび餅をテーブルに運ぶ。
こんな幸せな食卓があっただろうか。
しみじみ、この時間が大事だって思う。
「あいつ、また連れてきてよ。だって、私に言ったんだから。これから、僕のこと先生だと思ってくださいって。いい先生に出会えなかったのなら、これから僕が先生になりますって。」
お姉ちゃんは少し照れたような顔をしながら話す。
「先生・・・そんなこと言ったんだぁ・・何にも教えてくれないんだもん・・」
「直、今からあいつに電話してよ!私が相談に乗って欲しいって!絶対来るよ!」
お姉ちゃんは身を乗り出して、ニヤニヤしながらわらび餅に手を伸ばす。
「おいしいじゃん、これ。」
そんなささいな言葉がお母さんをどれほど幸せにするんだろう。
その後、トイレに駆け込んだお母さんは、目を腫らして戻ってきた。