綺麗になんてなれない
 気がついたときには柔らかい皮膚と皮膚が触れて、離れていた。
 目を見開いて見つめると、彼は鼻で笑った。
「はっ、いいだろ。キスくらい減るもんじゃなし」
 透明で儚く壊れそうなのに、鋭くて残酷な。ガラスのような笑みだった。
 私の好きな人はそうやって、私のファーストキスを奪ったんだ。


 ◇ ◇ ◇


 ――セフレ。

「あ、んっ……ふぅ! あ、あ、んんっ」

 ――彼と私の関係を簡潔に説明する言葉として、これ以上のものはない。

「あ、はぁっ。くっ……若葉のなか、キツい」

 そう言いながら、さらに奥に押し込んでくるんだから、義之は悪い男だ。
 経験が豊富でもない私は彼の思うままに揺さぶられ、抵抗も叶わずに快楽に絡め取られる。

「悪い、も少し」

 息を荒げてそうねだられれば、つい要求に応じてしまう。
 私の両足は義之の肩にかけて持ち上げられ、いつになく腰が上向く態勢が恥ずかしくて私は目を逸らした。
 こんな体位をどこで覚えてくるのよ。
 そんなことを本人に聞けるわけもない。
 義之のものが差し込まれる深さに、私は喘いだ。
 奥の奥をがつがつと突かれて、己の深い部分で快楽はどんどん膨らむ。先端の太い部分で、少し入ったところをぐりぐりと擦られれば、抑えることなどとてもできない。
 臨界点に達した熱にぶわっと包まれたあとは、一瞬だった。
 びくっびくっと震えた気がするけど、それらの出来事は遠い意識の向こう側。私はただ、身の内側でふわふわとたゆたう心地よさに身を委ねていた。
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