綺麗になんてなれない




 午前中の授業を終えて、クーラーの効いた屋内から外に出ると、梅雨特有のじめっとした空気が肌にまとわりついた。
 夏の盛りに比べたら気温はそれほど高くないのに、べとつくような湿度が苦手で、私はこの季節が好きじゃない。
 ジューンブライドなんて言うけれど、結婚式を六月にするのだけは絶対に嫌だ。
 そんな予定もないことをつらつら考えながら購買で昼食を調達すると、私は義之と落ち合ってサークルの部室に向かった。
 私と義之が所属しているのは一応文芸部。けれど、文化系のまったりさんが多いので、部誌の締め切り前でもない限り、ただの茶飲みサークルと化している。
 暇なときにとりあえず部室に顔を出すと必ず誰かがいるので、適当にしゃべって時間をつぶす。何をしても良い自由な雰囲気が気に入っている。

「こんにちはー」
「ちわ」

 部室のドアを元気に開けて、はきはきと挨拶した私。ぼそりとたった二文字で済ませる義之。先に部室に来ていた部員たちも、それぞれにばらばらな返事をくれる。
 私と義之はテーブルの空いている席に適当に座ると、買ってきたばかりの昼ご飯を取り出した。
 おにぎりと、サラダと、店頭で見かけて即買いしたお楽しみ。そのペットボトル飲料を目にした義之がさっと顔をしかめた。
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