教えて、春日井くん
「首輪でもつけて」
春日井くんとの付き合いは順調だった。
お互い都合のつく日は一緒に帰ったり、教室や空いている部屋でおしゃべりをしている。一緒に過ごす時間は楽しくてあっという間に過ぎていく。
だからこそ、貴重な時間を無駄にしてはいけない。
この日も教室にふたりで残っていたため、あることをお願いしてみた。
「御上さんが試してみたいことって、これ?」
「うん。はい、あーん」
再現してほしかった小説のワンシーンに彼女が彼氏にチョコレートを食べさせるというものがあるのだ。
私は買ってきたチョコレートを摘み上げて、春日井くんの元へと持っていく。
ちょっと躊躇いながらも、春日井くんが口を開ける。なんだかその様子がかわいい。
そんな風に油断をしていると、ぱくりと指ごとくわえられてしまった。
「えっ」
そして、私のことを見つめながら舌で指先をぺろりと舐めてくる。
「……っ、春日井くん」
「んー?」
「ゆ、指!」
「ごめん、ちょっと意地悪したくなった」
先ほどは一瞬躊躇っていたのに、今では余裕そうな笑みを浮かべている春日井くんに私も仕返しをしたい気持ちが湧き上がってくる。
「私にも食べさせて? ん!」
身を乗り出して、早く早くとすると春日井くんが硬直してしまう。
「……なんかはずい」
照れながらも春日井くんがチョコレートを一粒手に取って、私の方へと差し出してくれる。
私は緩く唇を開いて、春日井くんの指に口の中へと押し入れてもらう。
指を舐め返すのを警戒されたらしく、手がすぐに引っ込められてしまった。
「なんで引っ込めるの?」
「絶対仕返しされると思ったから」
むっとしつつ、計画変更。
もぐもぐとチョコレートを咀嚼し終えてから、もうひとつチョコレートを口にくわえた。
そして、そのまま春日井くんに近づいて、少々強引にチョコレートを口移しする。