教えて、春日井くん
あと一日が終われば、私たちはただの同級生に戻ってしまう。
クラスも違うし、きっと話す機会もなくなるはず。
胸のあたりがざわりとした。焦燥感に駆られて、スカートの裾を握りしめる。自分がどうしたいのかの答えがでない。
「御上さん!」
私に気づいた春日井くんが女の子と話すのをやめて駆け寄ってくる。
あんまりにも嬉しそうに笑うから、沈んでいた心がふわりと浮上していく。
心の隅っこに溶け残っている苦い残骸を隠しながら、私は微笑む。
「廊下で会えるなんてラッキーだ」
「そうだね。でも、結構春日井くん廊下にいない?」
「あー……まあ、御上さんと会えるかもって思って最近はよくいるかも」
知らなかった。ただ友達と話すために廊下に出ているのかと思っていた。
こんな些細なことが嬉しくてたまらくなるのは、私にとって春日井くんの存在が大きくなりはじめたからかもしれない。