教えて、春日井くん



春日井くんと少し話をして教室へ戻る途中、上島くんに声をかけられた。



「まだ続いてんだ? つっても、まだ1ヶ月か」

上島くんの言う通り、まだ1ヶ月。だけど私にはもう1ヶ月だ。終わりまで、あと一日。



「御上さんってあんまり嫉妬とかしないの?」

「……どう、だろ」

嫉妬を全くしないわけではないと想う。過去の春日井くんの初めてを奪った女子に対しては恨めしい気持ちにもなるし。



「春日井のこと、本気で狙ってるやつも中に入るよ」

「……そうだね」

さっき話しかけていた女の子のようにきっと何人かそういう子もいる。罪悪感と共に湧き上がってくる焦げ付いた感情は嫉妬なのかもしれない。


「あいつ、簡単に浮気しそうだから気をつけたほうがいいよ」

「春日井くんはそんな人じゃ」

「御上さん」

私の言葉を遮った上島くんは真剣な表情をしていた。そのことに気圧される。



「意地悪で言ってんじゃなくて、心配して言ってる」

「……うん」

「俺、一年の頃好きだったのは本当だから」

「……ありがとう」

上島くんは柔らかく笑うと「じゃあね」と言って他クラスに入っていく。本当にただ心配をして声をかけてくれただけみたいだった。


春日井くんが浮気。そんなことしないと信じているけれど、周囲にたくさん女の子がいるのは事実で、私には彼を縛る権利なんてどこにもない。


初めての感情を持て余しながら、私は再び心を沈ませて教室へ入った。





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