教えて、春日井くん
取り残された私たちの空気は重い。
胸の奥に黒くて苦い感情が染み渡って、私もここから逃げ出してしまいたい。
人の気持ちを繋ぎ止めるのは難しい。
恋なんて一過性で、きっとすぐに新しく塗り替えられる。だから春日井くんも、そうなのかもしれない。
「ごめん。あんなとこ見せて。本当なんでもないから」
「……なんでも、ない?」
「うん、気にしないで」
そっかって笑って答えられない。気にしないなんてできないよ。
春日井くんにとってあれは、なんでもないことなの?
「春日井くんにとって、ああいうのが日常なんだね」
「……全くなくはないけど、でも御上さんと付き合ってるし、不誠実なことはしないよ」
「明日で1ヶ月だよ」
「……うん。そうだね」
こんなに苦しいのは嫌だ。それだけじゃない自分のことも嫌になる。
なんですぐに振り解かないのかとか、私に気づかなかったらどうしていたのかとか。
そうやって今までも誘われていたのかとか、生まれて初めてのいくつもの感情が溢れ出てきそうになる。
「一日早いけど、ぜんぶ終わりにしよう」