教えて、春日井くん



突然の告白からの犬志望に戸惑っていると、そうだなぁと春日井くんがなにから提案をしてくる。


「付き合った記念に指輪を買いに行こっか」

「え、すぐに買いに行くものじゃないのよね……?」

私でもそのくらいの一般常識は知っている。付き合って一年記念とかそういうときに買う人が多いはずだ。



「うん、俺重いみたいなんだよね」

「……重いの?」

「言うの我慢してたんだけど、独占欲結構強いみたいで御上さんのこと好きな男とかマジで許せないし、付き合ったことのないウブ男子っていうやつらも憎い」


……最後のは憎まないであげてほしい。



「指輪は首輪代わりってことで。御上さん、男の前で絶対外さないでね」

「あの、私まだ告白を了承してない」

だけど春日井くんは答えをわかっているようでおかしそうに笑う。


「あんなに泣いてたのに、好きじゃないとか鬼畜なこと言うの?」

「……だって、付き合ったらまた嫌な思いになる」

「じゃー、俺が他の子と付き合ったら?」


それはもっと嫌かもしれない。
付き合っていて嫌な思いをするよりも、春日井くんが他の子と付き合う方が複雑な思いになる。



「大事にするから、お願い。俺のこと捨てないで」

耳元で縋るように言われ、胸に広がっていた苦みが薄れていく。






< 120 / 182 >

この作品をシェア

pagetop