教えて、春日井くん
「もうちょっとこのままで」
再び付き合い初めてから一週間。
「今日、俺の家くる?」
その誘いは突然だった。
放課後に春日井くんに誘われて家に行くことになり、学校帰りに家によるなんて付き合ってるっぽいなど実感しながら私は隣を歩く。
どうやら今日はまほこちゃんはバイトでいないらしく、私たちの二人きりだそうだ。ということは確実にそういう流れだろう。心の準備はいつだってできている。
春日井くんの家に入る前にご近所さんにチラチラと見られたので、明るく「こんにちは!」と挨拶をしてみると、向こうは拍子抜けしたように笑顔で挨拶を返してくれた。
「すごいね」
「え? どうして?」
「あんな視線向けられて笑顔で返せるなんて」
確かに不躾な視線だった。面白いネタでも探しているように上から下まで舐めるように見てくるご近所の主婦たち。
私の存在は、きっといいネタになる。だからこそ、きちんと挨拶をして好印象を与えたほうがいい気がしたのだ。
「ごめんね、嫌な思いさせて」
申し訳なさそうに謝られたけれど、これくらいどうってことなかった。
それよりも春日井くんの部屋に行くことに私は興奮していて、それを隠せているのかと冷や冷やしていた。痴女全開は流石に嫌だ。