教えて、春日井くん



自販機でペットボトルを購入した御上さんは、きょろきょろと周囲を見回してから、何故かペットボトルを振り出した。


いや、あれ炭酸……?

そして水道のところで蓋を開けて、見事に炭酸が噴き出す。それを見て、何故か楽しそうだった。ちょっと意味がわからない。



それ以外にも、困っている人がいたら黒子のようにそっと助けていて、親切な子のようだった。

あと、校内のカップルを見かけると影からガン見している。本を読んでいるふりして、ガン見している。

恋愛に興味がなさそうなのに、実はそういう願望があるのかもしれない。




二年になったある日、中庭を歩いていると新入生が三年の女子たちに囲まれているのが目に入った。

三年の女子の一人が、以前遊んだことがある先輩だったので、ちょっとまずいなと思い、どうするかと迷う。


あの人は気性が荒い。気に食わない女子がいるとああしていじめるのだ。

入学したばっかりなのにあの一年生の子、厄介な先輩に捕まっちゃったな。だけど男の俺が間に入ったら、火に油を注ぐことになる。


誰か教師呼んでくるか……と思っていると、先輩たちの頭上の窓が開いた。


そこにいるのは、御上綺梨だった。



下を確認して、冷ややかな表情になるとすぐに何処かへ消えていく。

そして、窓から手だけが見えて何かと思えば、茶色の物体を銀色のバケツをひっくり返して落としていく。あれは、たわしだ。


たわしが当たった先輩たちがぎゃーぎゃー騒ぎだし、その叫び声にすぐに教師が駆けつけた。



それはたわし絶叫事件と一部の生徒たちの間で話題になり、そもそも一年生一人と三年たちで何をしているのかと先生に先輩たちは聞かれ、いじめが露見したのだった。


俺は、御上綺梨という女の子が今まで以上に強烈に気になるようになった。






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