教えて、春日井くん
「ごめんね、痛かった?」



私の兄——御上千香とは、結構仲がいい。

兄が彼女できたときも教えてもらっていた。とはいっても、私が根掘り葉掘り聞くようになってからは、警戒しているのか当たり障りないことしか教えてくれなくなったけれど。

そんな兄に大事なことを報告し忘れていたのを思い出し、私は朝一番に兄の部屋へ侵入した。



「お兄ちゃん、起きて」

枕を抱きしめて眠る癖は相変わらずのようで、抱えながらすやすやと眠っている。今日は早く家を出ると言っていたのに、このままでは遅刻してしまいそうだ。


「時間大丈夫なの?」

「んー」

「起きてお兄ちゃん」

「はー……い……」

兄のベッドの横に正座する。
眠たげに目を細めている兄が、ぼーっと私を見つめること数秒。


「っ、なんで綺梨が俺の部屋に!?」

やっと目が覚めたらしく、異様に驚かれてしまった。寝起きは特にリアクションが大きい。


「部屋に入るときはノックって言っただろ!」

「……お兄ちゃん中学生男子みたいなこと言ってる」


呆れるというよりも怯えるような表情だ。兄は私の発言を警戒している節がある。案外純情なのだ。




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