教えて、春日井くん
「……なん、だよ。お前散々遊んでたじゃん」
「今は遊んでない」
「つーか、お前らなんてどうせ長く続くわけねーってかみんな思ってるって」
「勝手に思ってれば」
冷たい声音に驚いているのは私だけではないらしい。突っかかっていた男子も動揺しているように見えた。
「ああ、あと」
春日井くんの声が低くなり、嫌悪するように目を細めて睨みつける。
「俺の彼女に近づかないで」
腕を引いて歩き出す春日井くんは、私よりも半歩前にいるため表情が見えない。
機嫌が悪いのはわかるけれど、なにも言ってくれないのが少しだけ不安だった。
「あの、春日井くん」
「……ちょっと寄り道する」
「え? うん」
そう言って階段を下ると、二階にある美術室へと押し込まれる。部屋の中は電気がついていなくて、誰もいないようだった。
絵具と埃っぽい匂いがする。カーテンが開けられた大きな窓から差し込む日差しを眺めていると、肩を掴まれて強引に春日井くんの方を向かされた。
「今日、いつもと違うのなんで」
眉を寄せていて、ものすっごく不機嫌そうだ。てっきり今さっきの出来事によってなのかと思ったけれど、どうやら違うらしい。
「たまには変化をと思って……」
「かなり噂になってた。綺梨ちゃんが今日大人っぽくて色気があるって」
そんな内容で噂になっていたとは思いもしなかった。メイク以外にも髪の毛を巻かれたから、雰囲気が大人っぽくなったのかもしれない。
けれど春日井くんはあまり嬉しそうじゃないので、ひょっとしてタイプじゃないのだろうか。