教えて、春日井くん
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翌日、春日井くんとちゃんと話そうと思ったものの、話しかけるタイミングが掴めない。
そもそも私たちは日常生活で話したこともなかった。
共通の友人と呼べるような存在もいない。
窓側の一番後ろの席の私は、春日井くんのクラスの男子たちが体育着で校庭にいること気づき、ぼんやりと眺める。
女の子と遊んでばかりかと思ったけれど、案外男友達もいるらしい。楽しげに笑ってサッカーをしている。
春日井くんを見ていると、頭にキスという単語が浮かぶ。
キスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキス。
消しても消しても、キスが浮かぶ。ブロックのように脳内に積み上げられて、キスのゲシュタルト崩壊が起こりそうだった。
生まれて初めてのキスを、昨日彼と教室でしたんだ。
妄想や物語の中ではなくて、本物のキス。
春日井くんのことを噂でしか知らなかった。
女遊びが激しいから友達からは近づかない方がいいとも聞いていたし、絶対関わることのない相手だと思っていたのに。
でも、あのキスは不思議と嫌ではなかった。
むしろもう一度……あのドキドキを味わってみたい。私の思考は妙な方向へと転がっていった。
不意に春日井くんが上を向いて、視線が交わる。
少し目を丸くしてから、嬉しそうに笑って手を振ってくれた。
春日井くんが口パクで「御上さん」と言っている。
それが少し可愛くって、私の頬も緩む。先生にバレないように、小さく手を振った。