教えて、春日井くん
「完全なる彼女のペース」
「ごめんね、春日井くん」
「え……ごめんねって?」
戸惑いながら聞くと、綺梨ちゃん視線を外して苦笑する。
「あのね……」
嫌な予感がして、続きを聞きたくない。けれど、綺梨ちゃんはゆっくりと口を動かして、残酷な言葉を続ける。
「別れよっか」
離れていこうとする綺梨ちゃんを引き留めようと手を伸ばすと、体をすり抜けてしまう。
「私、他に好きな人ができたんだ。私が初めてなんだって」
「待っ……!」
声を上げたときには、意識がぐっと引き戻されて目の間には天井が広がっていた。
「はー……」
夢、だったらしい……。伸ばしている手を額のほうに持ってきて頭を抱える。最悪な夢を見た。
嫌な目覚め方をしため、テンションが上がらない朝が始まる。
あんなのが現実に起こってたまるか。
……いやでももしも、綺梨ちゃんのドタイプな真面目な男子が告白してきたら、どうなっちゃうんだ?
考えただけで、ため息が漏れた。