教えて、春日井くん
即座に立ち上がって、卵パンが入っていた袋をくしゃっと丸めてポケットに入れる。そして大股で綺梨ちゃんの方へと歩いていく。
黙って見て見ぬフリなんて無理だ。綺梨ちゃんのあんな可愛い笑顔を他の男に向けられているのなんて見たくない。
「なにしてんの」
綺梨ちゃんの腕をとって、真面目男子から引き剥がす。
「え、春日井くん?」
目をまん丸くしている綺梨ちゃんと、呆然としている真面目男子を交互に見て、にっこりと笑う。
「こんなところで、ふたりっきりになって何してんの?」
笑顔で圧をかけると、真面目男子は眉根を寄せて首を傾げる。
「えーっと、ごめん。彼女お借りしてました」
「……お借りって、意味わかってる?」
普通彼氏に向かって堂々とこんなこと言うか? 告白してたんだろ。
苛立って睨みつけると、綺梨ちゃんが軽く俺の肩を叩いてくる。
「違うの」
「違うってなにが」
「相談受けてて」
「相談? こんなところで?」
しかも綺梨ちゃんのタイプそうなウブ感のある真面目そうな男子だ。俺としては気が気じゃない。
「俺の恋愛相談聞いてもらってた」
少し照れたように言う真面目男子に、今日一番の大きな声が出た。
「は?」
この男子は、綺梨ちゃんに告白ではなく自分の恋愛相談をしていたらしい。