教えて、春日井くん



水着のお披露目は春日井くんの部屋で行うことになった。
着替え終わって事前に用意したバスタオルを巻いて、春日井くんの前に立つ。


「……っ」

ベッドに座っている春日井くんはそわそわとしていて落ち着かない様子だ。今更になって自分の提案がどういうことなのか気づいたみたいだった。


「見たい?」
「……それ聞く?」
「春日井くんに私の水着みたいって言ってくれないなら、見せるのやめちゃおうかな?」

ちょっと焦らしつつ意地悪をしてみると、春日井くんは枕を抱えながら顔を埋めてしまう。


「綺梨ちゃんさー……最近俺に意地悪するの楽しんでるでしょ」
「ごめんね、照れた顔が見たくて」

素直に謝ると、春日井くんから深いため息が聞こえてくる。


「正直見たい、けど見たくない……」
「どうして?」
「だってさー……絶対かわいいし」


そんなふうに照れて顔を隠して、余裕が消えている姿がたまらない。
抱きしめられている枕になりたい。むしろ今すぐ抱きしめたい。

ふと気になったことを聞いてみることにした。


「そういえば、春日井くんって彼女と海とかプールに行ったことある?」
「いや、ないよ。あんまりちゃんとデートとかしなかったし。てか付き合ってるって言っていいのかも微妙だったから」


それは……誠実な関係ではなく、全部遊びの関係だったってことだよね。

お互いそうだったのかもしれないけど、ウブな心を残しておいてくれてありがとう。

「じゃあ、彼女の水着を見るのは私が初めて?」
「うん、そうなるね」

両手を合わせて歓喜する。
なんて素敵な情報。


「……なんで綺梨ちゃん拝んでるの。立場逆じゃない? 俺これから水着見せてもらうのに」
「春日井くんが初めてもらえるんだなって思って嬉しくって」
「い、言い方!」






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