教えて、春日井くん
「でも私、春日井くんしか知らない」
その後の話 * 春日井視点 ▽
「……春日井くん」
体調が悪いらしく保健室で眠っている綺梨ちゃんの様子を見に行くと、とろんとした目で俺を見つめてくる。
「体調悪いって聞いたけど、大丈夫?」
「ん……ちょっと微熱っぽくて」
「早退した方がいいんじゃない?」
そうすると綺梨ちゃんは弱々しく頷いた。
ひとりで帰らせるのは心配だから送ろうかと言っていると、綺梨ちゃんが右手を伸ばしてくる。
ひょっとしたら熱で心細くなっているのかもしれない。
「ちょっとだけでいいから、傍にいて」
体温の高い手を取って、ベッドに寝そべっている綺梨ちゃんに顔を近づける。
「風邪……移っちゃう」
「いいよ、移しても」
軽く唇を重ねると、熱があるからかいつもよりも少し熱い。
潤んだ眼差しで俺を見ている綺梨ちゃんは、普段の好奇心旺盛で積極的な彼女には見えない。
「……春日井くん、頭撫でてほしい」
綺梨ちゃんが望むままに頭を撫でると、嬉しそうに顔を綻ばせる。
……めちゃくちゃかわいい。撫で回したい。でも体調悪いからほどほどにしないと。