教えて、春日井くん
「手でも繋ぎませんか?」
その後の話 (卒業式)▽



高校三年の三月。私たちは卒業を迎えた。
泣いている人や、いろんな人とスマホで写真を撮っている人を横目に、今日で見納めの学校を私は焼きつけるように眺める。



「春日井先輩!」

緊張で強張ったような声が聞こえて、振り返ると女の子が真っ赤な顔をして春日井くんに声をかけている。あれは告白だろうな。



「あれ一年の子だね」

亜未ちゃんがそっと耳打ちをしてくる。


「亜未ちゃん、知り合い?」
「第二の綺梨って言われてるから知ってるだけ」

第二の私? よくわからず首を傾げると、ひーちゃんが「清楚女子」と教えてくれた。なるほどと女の子をまじまじと見つめる。

色白で黒髪ロングのその子は、確かに私とどことなく雰囲気が似ているかもしれない。



「あ、いいの? 春日井どっかに連れて行かれるよ」


亜未ちゃんの指摘に私は頷くことしかできない。告白なんて人が多い場所ではできないだろうし、割って入るわけにもいかない。

だからといって、気分のいいものではないけれど。



「綺梨はさ、春日井と大学一緒なんだよね」
「うん、無事に受かったよ」

これから春日井くんとのめくるめくキャンパスライフに想いを馳せながらワクワクしている。そして一人暮らしも始める予定だ。

……春日井くんにはよこしまなことを考えないようにと言われたけれど。むしろ春日井くん、よこしまなこと考えないの!? なぜ!?




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