教えて、春日井くん
「綺梨も春日井もお互いに大変そうだねー」
ひーちゃんが苦笑しながら、言葉を続ける。
「だって、大学行ったら付き合っていること知らない人ばかりだから寄ってくる人も増えるでしょ」
確かに高校ではお互いに告白をされることはあるものの、大抵の人が付き合っていることを知っているため、想いだけを伝える告白というものばかりだった。
けれど付き合っていることを知られていなければ、本気で狙う女子が現れる……。
「修羅場を乗り越えてみせるね」
「いや、綺梨なんで修羅場前提なの!」
亜未ちゃんに呆れたように突っ込まれたものの、私には春日井くん争奪戦の未来が見える。大丈夫、心のウブごと私が守るね!
でも……ちょっと楽しそうなことを思いついた。
それは先日読んだ初々シリーズの最新作の話。
お互いに付き合っていることを隠しているカップルが隠れてコソコソといちゃつくのだ。……あれはよかった。すごくよかった。秘密の関係、めちゃくちゃ美味しい!
「綺梨、ぼーっとしてどうしたの?」
「亜未ちゃん、私今から楽しみだよ!」
訝しげな顔をする亜未ちゃんと、よかったねぇと微笑んでくれるひーちゃんに私は大きく頷いた。