教えて、春日井くん
何故か春日井くんが一歩後ろへ下がる。
先手必勝。私は逃すまいと教室のドアを閉めた。これで完璧だ。
そして振り返って、にっこりと微笑む。
「縛らせて?」
春日井くんが一瞬硬直し、すぐに目を見開いた。
「ちょ、綺梨ちゃん!? その純真そうな笑顔でそういうこというのやめて!?」
「ごめん。じゃあ、もうひとつの方をお願いするね。春日井くんのネクタイで目隠しさせて?」
「それもどうかと思うけど! てかなんで俺がされる側!」
どうしても今日叶えたいことのひとつなのだ。だから春日井くんには頷いてもらわなければいけない。
両手を合わせながら、真剣に懇願してみる。
「お願い、春日井くん」
「……っ、ぅ」
微かに頷いた春日井くんに私は顔を綻ばせた。
>> 春日井くん、ありがとう! <<
と心の中で叫びながら、椅子に座ってもらった。
しゅるりとネクタイを解いて、春日井くんの目元を隠しながら結ぶ。