教えて、春日井くん
「制服の春日井くんが見納めなんて寂しいな」
「ネクタイで目隠ししといてなに言ってるの……」
一度でいいからしてみたかった目隠しに、私の頬が上気していく。
はぁ……なんて素敵な光景! これ、再現したかったの!
「こんなところ見られたら、大変だね?」
「……みんな帰ってるでしょ」
一、二年生は用がないのでとっくに帰宅しているし、三年生たちも夕方からクラスごとに集まりがあるため、卒業式後に写真などを一通り撮って帰宅してしまった。
「わからないよ。まだ何人かいるかも」
けれど、ドキドキするシチュエーションを演出したくてわざと囁いてみる。
「っ、綺梨ちゃん耳元で喋らないで」
「耳好きでしょ」
「ちっ、違う別に耳好きとかじゃない……弱いだけ」
耳攻めると喜んで見えるのになぁと口を尖らせる。春日井くんは案外素直じゃない。
「どうしてほしい?」
「……目隠しとってっていってもダメなんでしょ」
「うん。まだダメ」
これからたっぷりと目隠しを堪能したい。
春日井くんの視界は今はなにも見えなくて、私の声だけが聞こえているはずだ。一体どんな気分なのだろう。