教えて、春日井くん
春日井くんのワイシャツを掴み、背伸びをして首筋に口づける。
そして同じように舌でちょっとだけ舐めてみた。
「——!」
離れて反応をうかがってみると、春日井くんは硬直している。
「え……どうしたの?」
「あ、いや……その」
顔は真っ赤に染まっていて、彼は手練れだというのに不思議な反応だった。
「っ、だって御上さんからそんなことされると思わないじゃん」
「びっくりした?」
「したよ……嬉しいけど、でもやばい。心臓、やばい」
意味がよくわからないけれど、とりあえず驚かせてしまったものの、嫌ではないらしい。
なんだか反応が……いつもの春日井くんというよりも初々しさを感じる。
「春日井くん、顔赤いね」
「ダメ、見ないで」
「やだやだ、見たい」
脳裏に焼きつけるために食い入るように見つめていると、春日井くんの頭が下がってきて私の肩にぽすっとのせられる。
「ダメだってば」
「……っ!」
「あー……はず」
これは! まるで初々シリーズの再現のようで、目がギラリとして気分が高揚していく。
「春日井くん……そういう一面もあるんだね」
「やめて、恥ずかしいから」
「ごちそうさまです」
「……?」
春日井くんの髪をそっと触ってみると子猫の毛みたいな感触だった。なんだか無性に撫で回したい気持ちになってしまう。
「それ……好き」
「頭撫でるの?」
「うん。もう少しだけ、撫でて」
本当に猫みたいだ。春日井くんが頭を撫でられるのが好きなんて意外だ。やっぱりちょっと可愛いかもしれない。
それにオレンジのような爽やかな匂いがする。私の好きな匂いとよく似ていて、不思議と落ち着く。
そうして私たちはお互いの心の平静を取り戻すまで、しばらくその体制で過ごした。