教えて、春日井くん
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「あの、何故?」
放課後、春日井くんはどういうわけか教室にいた。しかも私の前の席に座っている。
「何故ってなにが?」
よくわからないと言った様子で聞き返されて、私は首を傾げた。
噂によると春日井くんには本命ができたらしいので、私の元へはもう来ないと思っていた。
「もう遊びはやめたんでしょ?」
「やめたよ」
「本命ができたって聞いたけど」
春日井くんは本を開いていた私の両手を掴み、閉じさせてきた。あ、しおり挟んでいないのに。
「だから、口説きにきた」
緩慢な動作で顔と視線を上げると、甘い顔を持っている男の子が私を見つめている。
綺麗な顔。そして透明感があって、どこか掴みどころがない。
そんな風に思うのは彼の髪の色が周囲とは違い、白っぽい色だからだろうか。
「もしかして私、今口説かれてる?」
「もしかしなくても、こないだからずっと口説いてるけど」
はぁっと深いため息を吐く春日井くんをみる限り、本当のことらしい。