教えて、春日井くん
「春日井くんの周りにはたくさんの女の子たちがいるのに、どうして私なのかよくわからない」
「きっかけは……御上さんの存在を気にすることがあって、それから見てたら意識しはじめたんだ」
「ちょっとなに一つわからなかった。穴埋め問題やってる気分」
きっかけ話せなくて、でも何かがあって私の存在を認識し、それから意識? うん、さっぱりわからない。
「好きって思ったのは、大量のたわしを窓から落とした時かな」
「たわし? そんなことで好きになったの? 春日井くん、大丈夫?」
たわしきっかけで好きになったなんて、だいぶ心配になる。あんなもの誰でも窓から落とせるよ。
「いや、たわしっていうか、一年生の子が上級生に嫌がらせ受けてたから止めるためにたわし落としたんでしょ」
「ああ……あれね。空からたわしが降ってきて悲鳴あげてたのがおもしろかったよ
ね」
「そのおかげであの子助かったでしょ」
そういえばそんなこともあった。
今年の四月、一年生女子が三年の男子たちによく声をかけられていた。そのことが気に食わなかった三年の女子たちが度々つっかかっていたのだ。
私も一年生の頃、その女子の先輩たちに似たようなことをされたので自分と重なった。だからこっそりと仕返しをしただけ。
「男の俺が助けに入っても火に油注ぐだけだし、どうするか迷ってたらさ、窓からいきなり御上さんの姿が見えて、たくさんたわし落としてたからビビったよ」
空から降ってきたトゲトゲのたわしに驚いた先輩たちは悲鳴を上げたため、先生が駆けつけて嫌がらせが露見した。ざあまあみろと思い、胸が少しスカッとした。
あれは今から二ヶ月前の四月のこと。
「それ以外にもいいなって思ったところは色々あったんだけどね」