教えて、春日井くん



嫌ではないと首を横に振る。だから彼にもう一度してほしいと言った。

キスを始めて教えてくれたから、たまごから孵った雛のように私は彼に懐いてしまったのだろうか。



「付き合ってみない?」

この間も似たようなことを言われたけれど、今日はちょっと感覚が異なる。拒否の言葉がすんなりとでてこない。



「私と、春日井くんが?」

「1ヶ月、試しに付き合おうよ」

これはどういう流れなのだろう。
1ヶ月私たちは付き合ってみて、それでなにかが変わるのか想像がつかない。受け入れた場合と断った場合の未来をとりあえず見せてほしい、神様。



「それでもしも好きになれなかったら別れる」

それって不誠実なことなのではないかと疑問が生まれるけれど、そもそも付き合ってもいないのにキスをして、再びしてくれ〜と強請る私の方が不誠実だった。



「安心して。御上さんが嫌がることはしない」

「私の嫌がること?」

「あ、でも〝したい〟ことならいくらでもするよ」

「致しましょう、お付き合い」


目を大きく見開いて、両手で机を叩く。

私のしたいことをいくらでもしてくれるということは、こちらの望むありとあらゆるシチュエーションを試してくれるということだ。なんて美味しいお話でしょう。


けれど言い出しっぺの春日井くんは不服らしく、眉間にシワを寄せている。




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