教えて、春日井くん
顔を覆っていた手を強引に掴み、ちゅっと口づけてから指先を舐めてみる。
「ごめ、本当ダメ……っ」
こうなったら春日井くんを脅す勢いで指を食べるように舐めてやる、と意気込む。
「待って、御上さ」
「きす、していいっへ、いふまでやめなひ」
「く、くわえながら喋んないでくんないっ!?」
え、なんか春日井くんのこの反応……萌える! やだ、なに、きゅんきゅんする!
経験は豊富なはずなのに、こんな反応をされてしまったらヨダレが垂れそうになる。
「……マジで、俺無理だ」
舐めていた指を引っこ抜かれてしまい、むっと口をへの字に曲げた。
ひどくない? 告白してきたのは春日井くんなのに、無理なんて突き放すなんて。
釣った魚に餌をやらない男なの!? それがチャラ男・春日井一樹という男なのだろうか。
けれどもう彼女になったのだ。ここで食い下がるわけにはいかない。
私の望む小説のシチュエーションを春日井くんに再現してもらうのが目標なのだ。そのためにはなるべく拒否されない関係でいたい。
あとできれば先ほどのような反応が欲しい。
「どこがダメだったの!? 今後の参考に教えて!」
前のめりになって聞く私を、気力の失った眼差しで見つめながら春日井くんが深いため息を吐く。
「別れたい……好きだけど」
「いいえ、ダメです。まだ一日目です!」
こうして私たちの不純情なお付き合いが始まった。