教えて、春日井くん
「触れたい」
付き合って三日目は土曜日だった。
私の家は、休日でも家族は多忙なためいないことの方が多い。
私の祖父は会長で、父は社長をしており、子会社がいくつもある。
主に化粧品やヘアケア、美容食品、製品開発研究などを手掛けている会社で、幼い頃から家族が揃うというのは年間行事の時くらいだ。
母は老舗旅館の娘で時折実家の手伝いにいってしまうし、大学生の兄と姉は学業やサークルで留守にしがち。
なのでいつも私は部屋でひとり、本を読む。
まほこちゃんから勧めてもらった初々シリーズの小説とコミカライズを読んだり、作者さんの別のシリーズに手を出したりしている。あとは飼い猫のまつたけと戯れる。
普段はそれが楽しい休日だった。
だけど、ふと春日井くんのことが頭を過ぎる。
……春日井くんは、今なにしているのかな。一時間くらい返事が来ていない。
金曜日に春日井くんに連絡先を聞かれた。
けれど、私は連絡用のアプリを入れていないためショートメールで基本的にやりとりをしていると話すと、一瞬固まってしまった。
春日井くん曰く、ショートメールには配達業者を装った詐欺以外にも、変態向けの詐欺メールがくることがあるため、絶対にクリックしないようにと注意をしてきた。
彼は私のことを幼い子どもかなにかと勘違いしている。
少々不満に思いながらも金曜日の夜から、ゆるゆるとショートメールでのやりとりが続いている。そんなことを考えていると、返信が届いた。
なんだか付き合っているっぽい。本物の恋人同士がこういうことを実際にするのかは知らないけれど、漫画や小説の登場人物たちはこういうのをしていた。
私、今彼女してる。