教えて、春日井くん
私の言葉を遮るように聞こえてきたのは、春日井くんの声だった。
上島くんの隣までやってきた春日井くんの表情は、相変わらずの柔らかい笑みなのに、纏っている空気が少しピリついている。
「もしもとかそんなif論ない。御上さんは俺の彼女だから」
上島くんは顔を顰めて舌打ちをすると、背を向けて行ってしまった。
春日井くんは表情を変えることなく、私の腕をとって歩き出す。
周囲の視線を感じたけれど、私は春日井くんの手を振り解かずに、ただ黙ってついていった。
そのまま外へ行くのかと思っていたけれど、ひと気のない音楽室に入って春日井くんはドアを閉める。
……振り返って彼が見せた笑顔は、なんだか不穏だ。
「何人からか、告白されてるんだって? さっきみたいに」
なんだか言葉に棘がある。
「春日井くんのところまで届いてるんだ」
「初めてっぽい人はいた?」
初めてっぽいというのはつまり付き合った経験がなさそうな男子のことだろう。
今日告白をしてきた男子たちを思い浮かべながら、私は首を横に振る。
「うーん、いなかったかなぁ」
「へえ……」
すぐに広まるなんて、すごいな。感心していると、春日井くんが私の腕を掴んで引き寄せてくる。