教えて、春日井くん


確信犯だ。今日はオレンジの味がする。

なに、この人。ずるい。心にウブ飼ってるのに、急にこんな手慣れたことしてくるなんて、ずるすぎる。

それに約束のシチュエーションと違う。————なんで私、受け入れてるの。



「ま、っ」

「やだ」

「はぁ、待って……っ、酸欠になっちゃう」


息が苦しくて、もう離してほしいと訴えると額がこつんと重ねられる。

春日井くんは甘えたように、そして懇願するように私を見つめていた。



「お願い、もっとさせて」

「な……っ」

「他の男に見せない顔、俺だけに見せてよ」


春日井くんは私の頬にキスをすると、そのまま首筋に落ちていく。


「ひ……っ」

柔らかい唇が私の首筋に触れて甘噛みをする度に、びくりと体が跳ねてしまう。

くすぐったい。だけど、それだけじゃない妙な感覚。体が熱くなって、春日井くんに抱きついて縋りたくなる。

思考が甘く熱く溶かされていく。



「……それ、いや」

「本当にいやなの? じゃあ、やめる?」

「いじわるだ……」


本当は全部わざとやっているくせに。私がいやだって言っても、やめてくれないくせに。

楽しげに笑って、耳元で甘美な毒を囁いてくる。




「俺だけに甘えて」




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