教えて、春日井くん
「……つまり練習が必要?」
翌日、学校へ行くと視線の雰囲気が変わった。
なにやら生温いものが多くて、にやにやされている気がしてむず痒い。
この正体はなんだろうと、教室へ行って亜未ちゃんとひーちゃんに聞くと返ってきた言葉に驚愕した。
「バカップル」
「え」
「って、今朝は噂になってるの」
亜未ちゃんの言葉に目眩がした。
一日でなんでそんなことになっているの!? 学校の噂って塗り替えられるの速すぎない!?
「いちゃいちゃと追いかけっこしながら昨日下校してたんだって?」
ひーちゃんに聞かれて、首を傾げる。いちゃいちゃ……してたっけ。
音楽室を出た後のことを思い出し、「あっ」と口を丸く開く。
「……私が春日井くんを追い回してた」
「なにがどうなってそうなったのか謎すぎるけど、それを目撃した人が結構いたみたいだよ」
あれはちょっと楽しすぎた。だからつい、恥ずかしがる春日井くんを周りの目を気にせずに追いかけてしまった。
一日にして私たちは『春日井が強引に迫って付き合った』という印象から、『実はバカップル』と認定されてしまったようだ。
「でもお似合いだって言っている人もいるよ」
ひーちゃんがよかったねと笑ってくれる。
私は後ろの席の村井さんの〝御上さんと春日井くんだとなんか違う〟という発言を思いだした。
お似合いだと思ってくれる人がいるんだ。そのことがなんだかくすぐったかった。