教えて、春日井くん


まるで子どもに言い聞かせるようだったので、悪態をついてみる。


「男の子は女の子の最初の男になりたがるって本で読んだよ!」

「なんでそんな本読んでるの」

春日井くんは兄のようだ。

兄も私が初々シリーズの小説を読んでいると、ブックカバーを無言でつけてきたり、初めての女子ってどう思う?と聞いたら、青ざめて「いいと思うけど、人に聞いてはいけません」って言ってきた。


「あのさ、女の子はいろいろとあけすけに言わないようにね」

ああ、なるほど。言い方に問題があったのかもしれない。


「恥じらって言うべきってこと?……しょ」

「いや恥じらったフリしても言ってるし! そういう単語を言わないの」

「わかった。それなら、私は初めてです!」

「もー、アホなの? かわいい顔して頭の中ほんっっっと変態だよ、この子は」

春日井くんは綺麗な顔を顰めて、私の頬をつねってくる。

でも軽くなので痛くない。こういうところが彼のいいところだと思う。基本的に女子に優しいのだ。


だけどもう一つだけ聞きたいことがあるのを許してほしい。



「ねえ……私の初めてほしい?」

私の頬をつねっていた春日井くんの両手がぶらんと落ちて、振り子のように揺れる。

そして頭を抱えて、その場に蹲ってしまった。


「っ、あのさぁ……っ俺の話聞いてた!?」

「ほしくないならいいんだけど」

いろんな女の子とお付き合いをしてきた春日井くんにとっては、私の初めてなんてあまり興味がない場合もある。


「ほっ」

「ほ?」

「ほしくないわけないし、他のやつにまじであげないでほしいし、だけど御上さんがあげてもいいかなって思う人にそう言うのは渡すべきだから……いやでも、その相手が俺だったらうれしいけど」

ごにょごにょしてる。
気になって私もしゃがんで、春日井くんを覗き込む。でも両手で覆われていて顔は見えない。

だけど実にウブ感あふれていて、私はうれしいです。

春日井くん。赤い耳が見えてる!




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