教えて、春日井くん



「綺梨は変態だけど、いい人だから大丈夫だよ」

「まほこちゃん、変態は余計」

「変態だけど、私のこと助けてくれたし、あれには感謝してる」

「……あれって?」

「行く当てのなかった私のこと、家に連れて行ってくれたじゃん」


ああ……あのときのこと。

おっさんから逃げた直後、私と同じく家出少女だったまほこちゃんを連れて、我が家へ帰ることにしたのだ。

母にバレないように、こっそりとまほこちゃんを匿い、私たちは楽しい女子会をした。そこで初めて教えてもらったのが初々シリーズ。


「またお泊まり会、したいね」

「あー……お泊まり会ね。綺梨の家だと、また綺梨が誘拐したと疑われるからうちくる?」

「うん! 行きたい!……ん? 誘拐?」

拉致って聞こえたけど、空耳かな。私は拉致なんてしたことない。それにしてもまほこちゃんの家でお泊まり会なんて楽しみすぎる!


「でもうちは綺梨の家みたくでっかくない普通の家だからね」

「まほこちゃんと一緒のベッドに寝る!」

「は? 床で寝てよ、狭い」

「そんなっ!」

まほこちゃんは塩対応女子だけど、きっとなんだかんだ一緒のベッドで寝てくれると信じてる。意地でも寝る。


「今度の土曜日くる?」

「行きたい行きたい〜!」

「じゃあ、決まりで」

週末のまほこちゃんとのお泊まり会に浮かれながら、電話を終わらせるとメッセージが入っていた。

相手は春日井くんだ。




『土曜日、会えない?』

先約があるため、ごめんなさいと断りの連絡を入れる。

そういえば休日にデートというものをまだしていない。今度試してみたい。初々シリーズで予習しておこう。




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