教えて、春日井くん






金曜日の放課後。春日井くんと待ち合わせ場所として教室以外で、定番化しつつある音楽室。

そこへ行くと、珍しく彼の方が先にいた。そして窓の外をぼんやりと眺めている。

その横顔が憂いを帯びていて、なんだか気になった。視線を辿ってみるとサッカー部が校庭にいる。


「春日井くん?」

声をかけてみると、私が来ていたことに気づかなかったのか驚愕した様子で大袈裟なくらい大きく肩を揺らした。



「い、いつから?」

「えっと、ついさっき?」

「そ、か」

繕うような笑顔が引っかかる。春日井くんとの距離を縮めて、窓に手をつく。まるで壁ドン。……いや窓ドン?



「サッカー」

「っ!」

「男子」

「?」

「グラウンド」

「えーっと、なに?」

……ふむと考え込む。春日井くんが反応を示したのは、サッカーという単語だ。


「ねえ、これ俺……襲われるの?」

「襲っていいの?」

「恥じらいをもとうね、御上さん」

なんだか最近私のことを子ども扱いする。それにしても春日井くんはやっぱりどこか元気がない。




< 70 / 182 >

この作品をシェア

pagetop