教えて、春日井くん



「俺、中一の終わりまでサッカー部だったけど、ちょっと他校と揉めちゃってさ」

春日井くんはなんてことないように軽い口調で話し始める。


「他校のサッカー部のマネージャーに告られたんだけど、それを気に食わないその学校のやつらに練習試合でわざと転ばされて。そんで部の連中が怒ってくれて、乱闘騒ぎになって部が活動停止」

「えっ、でもそれは春日井くんたちのせいではないよね」

「でも暴力沙汰になったから。だから俺が部を抜けることで、活動停止を取り消してもらった」


彼が責任をとって、一人だけサッカー部から去ったということなのだろう。

サッカー部の人たちは、春日井くんが他校にされた仕打ちに怒った。

暴力という方法は間違えてしまったかもしれないけれど、でも……悪いのは他校のわざと転ばせてきた人たちなのに。



「辞めるなって何度も言われたけど、部の連中がいつも頑張って練習してたこと知ってたから」


自然と手が伸びて、春日井くんの指先を掴む。

そのまま私たちは隣同士で床に座り込んだ。




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