教えて、春日井くん


慰めの言葉とか、そういうのをなんとなく求めているわけではない気がする。



ただ触れ合う肩の温度が妙に優しくて、落ち着く。

辞める必要なかったとか、今からでもサッカーをしたらとか、たぶんそんな言葉は春日井くんはいらない。


「なにを選んでも、苦い思い出は溶け残るものだと私は思う」

「……そうだね」

綺麗さっぱり水に流して追われるほど、簡単なことではないから私たちは選択肢に悩む。



「実はその頃から妹と段々仲悪くなっちゃって」

「どうして仲悪くなっちゃったの?」

「俺の素行が悪くなったからかなー。でも妹も中学入ったらちょっとグレたけど」

どうやら春日井くんの妹さんは一つ下で、小学生の頃は仲がよかったらしい。

けれど春日井くんが部活を辞め、妹さんが中学に入った頃から、あまり口をきかなくなったそうだ。



「俺が高一になった頃、妹が更にグレちゃって家に帰ってこなくって」

「え、家出!?」

「うん。そしたら二日後になんかすんげー艶々になって帰ってきた」

「つ、艶々……? なにがあったの?」

グレた妹が家を出て、艶々になって帰ってきたって、わけがわからない。




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