伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
「どうかしましたか?」
微笑みかける王子を見上げてエレナは微笑み返した。
「いえ、なんでも」
「おや」と、立ち止まった王子がエレナの顎をクイと支える。
え?
エレナは思わず目を閉じた。
王子の口づけは甘い香りがした。
顔が熱くてはじけてしまいそうだ。
もう、王子様ったら、大胆なんだから。
お父様とお母様の見ている前なのに。
目を開けると、王子がペロリと唇をなめていた。
「ホッペに真っ赤なジャムがついてましたよ」
まあ!
わたくしとしたことが。
侍女があわててハンカチを持ってくる。
それを受け取って顔を拭きながら、エレナはつい声に出してしまった。
「でも、ずいぶんやり方が強引すぎません?」
「これは失礼」と、王子が頭を下げる。
「あ、いえ、そうではなくて。あまりにも急なハッピーエンドだったもので」
王子がエレナを見つめて微笑む。
「いいではありませんか。僕も、とても幸せですよ」
「はい」
素敵な笑顔に胸がときめく。
いろんなことがあったけど、もうすべて忘れてしまいましたわ。
でも、こんな強引なオチでみんな納得するのかしら。
まあ、いいわよね。
なんていったって、この物語の主人公はこのわたくしなんですもの。
結末は最初から決まっていたのですから。
お姫様と王子様は幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし、ですわ。
(完)
微笑みかける王子を見上げてエレナは微笑み返した。
「いえ、なんでも」
「おや」と、立ち止まった王子がエレナの顎をクイと支える。
え?
エレナは思わず目を閉じた。
王子の口づけは甘い香りがした。
顔が熱くてはじけてしまいそうだ。
もう、王子様ったら、大胆なんだから。
お父様とお母様の見ている前なのに。
目を開けると、王子がペロリと唇をなめていた。
「ホッペに真っ赤なジャムがついてましたよ」
まあ!
わたくしとしたことが。
侍女があわててハンカチを持ってくる。
それを受け取って顔を拭きながら、エレナはつい声に出してしまった。
「でも、ずいぶんやり方が強引すぎません?」
「これは失礼」と、王子が頭を下げる。
「あ、いえ、そうではなくて。あまりにも急なハッピーエンドだったもので」
王子がエレナを見つめて微笑む。
「いいではありませんか。僕も、とても幸せですよ」
「はい」
素敵な笑顔に胸がときめく。
いろんなことがあったけど、もうすべて忘れてしまいましたわ。
でも、こんな強引なオチでみんな納得するのかしら。
まあ、いいわよね。
なんていったって、この物語の主人公はこのわたくしなんですもの。
結末は最初から決まっていたのですから。
お姫様と王子様は幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし、ですわ。
(完)